当センターの検査をご利用いただいている企業のご担当者様や個人のお客様にお話を伺いました。
お取り組みの一例として、ご紹介させていただきます。
まず、御社の概略と事業内容についてお伺いします。
当社は、1909年に成田山新勝寺への参詣輸送を目的として創立されて以降、日本で最初の地下鉄との相互乗り入れや、スカイライナーをはじめとした空港アクセスの強化など鉄道ネットワークの拡充を進めてまいりました。2025年4月には新京成電鉄株式会社と合併し、現在は松戸線を加えた8路線178.8kmにわたり、沿線住民の通勤通学や成田国際空港と都心を結ぶアクセス手段として、多くのお客様にご利用いただいております。
鉄道輸送を起点として、地域のインフラとしてなくてはならない存在ですね。安全への取り組みに状況はいかがでしょうか。
関係省令に基づき、運転士や車掌をはじめとした列車等の運転に直接関係する係員に対して、定期的な適性検査や教育訓練を実施し、資質管理を徹底することで事故防止に努めています。


様々な検査や訓練を実施されていることと存じますが、SAS(睡眠時無呼吸症候群)検査を取り入れたのはいつ頃からでしょうか。導入に至った背景についてもお聞かせください。
2018年より、SAS対策支援センターを利用し、スクリーニング検査を開始いたしました。
従来は健康診断とアンケートの結果をもとにSASの疑いがある者へ精密検査を指示していました。しかし同業他社や当社においてもSASとの関連が疑われるヒューマンエラーが発生しており、管理体制強化の必要性を強く感じていました。

導入の決め手になったのはどの点でしょうか。
同業他社のSAS管理状況を確認したところ、既にスクリーニング検査を導入している会社が多く、当社の取り組みが遅れていると分かりました。さらに、一度に数多くの検査が実施できる点やコスト面も導入の決め手になりました。
─SAS対策支援センターは業界の中でも機器保有台数が多く、大手のまとまったご依頼にも対応でき、機器の使い回しをしない「1人1台」を徹底しているので指名やリピーターが多いそうです。導入前に不安に感じていた点はありますか。
運転士全員に検査について理解してもらうことや、機器の受け渡しから返却、検査結果までの流れをスムーズに対応できるかという懸念がありました。ただ、乗務員集合教育での周知やSAS対策支援センターとの調整を経て、問題なく運用することができました。

導入にあたり苦労された点や工夫された点はありますか。
健康診断のBMI値とSAS検査の結果を記録し、治療中の者には受診の度に治療状況報告書を提出してもらうなど、管理体制の強化に努めました。
BMI値とSASの数値に相関性があることは以前から指摘されており、SAS対策支援センターの統計でも明らかです。両方をモニタリングしたフォローアップは効果が高そうですね。検査は、どのくらいの規模で利用されていますか。
3年毎の定期検査で、運転士および動力車操縦者運転免許を持つ職員約300名が検査を受けています。また、C判定以下やBMI値が基準を超えた者については翌年も検査を受けてもらっています。
実際に導入してみて気付いたメリットはありますか。
D・E判定は全体の約4%程でしたが、C判定が約36%と、軽度ながらSASがこれほど身近なものであることには驚きました。その気付きから、定期検査の必要性を実感できたことが大きなメリットです。

SAS対策支援センターの12年30万人の統計でも、Cが37%なので、ほぼ同等ですね。DとEはあわせて11%でした。これは10人に1人以上がSASということになり、かなりの割合です。検査に対する、社員の方々の反応はいかがですか。
指に違和感があった、眠れなかったといった声もありますが、SASの症状は自覚しにくいため、検査を通じて初めて自身の症状に気付いた社員も多く、検査のメリットを実感しているようです。
指にはめるクリップはプローブといい、少しきついと感じる方も多いのですが、精度が一番高いためこちらを採用しているそうです。SASは寝ているときの症状なので自覚しにくいのが特徴ですが、多くの方が気づくきっかけとなり何よりです。社内外での意識の変化はありましたか。
定期検査の実施や健康管理の徹底により、運転士・乗務区・本社部門それぞれでSASへの理解や重要性の認識が年々高まっていると感じています。 検査によってSAS治療の必要性に気付き、業務に支障をきたすことなく適切な治療を受けることができています。運転士の健康状況の改善は、事故の未然防止に繋がると考えております。

SAS検査では、悪い結果が出て仕事を失うのではないかといったご不安の声が出ることもあるそうですが、管理部門の適切なフォローアップにより社員の皆様が安心して受けられ、結果として健康管理が向上しているように見受けられます。今後の活用についてはどのようにお考えですか。
現行の体制を継続し、全員を対象とした3年に1度の定期検査、C判定以下は翌年以降の継続的な検査、D・E判定者には精密検査を受診し必要に応じて治療開始という三段階での運用を続けていきたいと思っています。
検査結果が悪かった方には病院への紹介状を同封していますが、活用されていますか。
はい。活用しております。検査結果がD・E判定だった者には、医療機関にて精密検査を受けてもらい、診断次第で治療を開始することとしています。
SASサポートセンターのホームページに、睡眠時無呼吸症候群についての情報掲載があるのはご存知でしたか。
こちらについては存じませんでした。ぜひ参考にさせていただき、SASの理解度及び健康管理の意識向上に活用したいと思います。

ホームページでは、精密検査を受けたい方向けに最寄りの病院を探せるほか、オンラインでご覧いただけるコラムが充実しています。また、SASについて丸ごと知ることができる小冊子もお配りしているので、併せてご活用ください。小冊子はお問い合わせいただけましたらお送りしています。
最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。
身体が資本となる運転士の健康管理は、安全・安定輸送を実現するうえで、必要不可欠と考えております。SASの対策を継続して実施していくことに加え、社会を取り巻く状況の変化に柔軟に対応していきたいと思っております。

この度は、京成電鉄様 鉄道本部 運輸部 運転課長 髙橋様、運転課長補佐 永嶋様、運転課員 荒原様にお話を伺いました。
詳しいお話をありがとうございました。
*京成電鉄株式会社様 https://www.keisei.co.jp/
*インタビューは2025年10月現在の内容になります。